銀行業界の景気動向や成長性・将来性
銀行業界とは、国民や企業のお金を管理・運用し、国民の生活の中で上手に流通させていく業界のことです。具体的には、顧客のお金を預かる「預金業務」、預かったお金を貸し出す「貸付業務」、そして口座間の資金移動を行なう「為替業務」の3つが主体となり、国全体のお金の流れを作り出しています。
今回は、そんな銀行業界に焦点をあてて、景気動向や成長性・将来性、そして3大メガバンクの概要や動向などをまとめ、業界分析しました。シェア上位企業の動向や将来性を比較すると共に、銀行業界全体としての今後の課題にも注目です。
▼ 目次
銀行業界の概要
日本銀行
日本銀行(以下「日銀」)は、日本の金融の中心にある「中央銀行」です。「政府の銀行」「銀行の銀行」などと呼ばれることもある通り、銀行や政府の金融機関。個人で利用することはできません。
日銀の役割は大きく分けて4つあります。
- 日本銀行券(お札)の発行と回収
- 「政府の銀行」として、政府が預けた国庫金(国民が納めた税金や社会保険料)の管理・事務を行なうこと
- 「銀行の銀行」として民間の金融業者のお金を預かったり、資金として貸し付けたりすること
- 金融政策で経済の安定を図るため、世の中に出回るお金の量を調節したり、金融機関に貸すお金の金利を上げ下げしたりすること
このように、通貨価値を維持するために物価の安定を図ること、金融システムがしっかり機能するように管理しながら安定化を図ることが日銀の任務。まさに、日本の金融業界を支える存在であると言えます。
3大メガバンク
大都市に本店を持って全国展開している銀行を「都市銀行」と言いますが、1980年代までは都市銀行13社が「大手銀行」と呼ばれていました。
しかしバブル崩壊によって経営体制の強化、規模の拡大化が求められて銀行は再編時代を迎え、その結果「三菱UFJフィナンシャルグループ」、「みずほフィナンシャルグループ」、「三井住友フィナンシャルグループ」といった通称「3大メガバンク」が誕生。商業銀行だけでなく、信託銀行、証券会社、リース、シンクタンクなどの機能を併せ持ち、ひとつのグループとして総合的な金融サービスを展開しています。
このようなグループ体制を取っている銀行は他にもあり、代表的なのが「三井住友トラストホールディングス」、「りそなホールディングス」などです。どのグループも再編や統合を繰り返し、現在の体制に至っています。
地方銀行
一定の地方を中心に営業活動を行なっている地域密着型銀行のこと。各都道府県に本店を置いており、地域経済を支える存在です。
ゆうちょ銀行
「日本郵政グループ」の運営する銀行。かつて国営であった全国区の強みを活かし、各地にある郵便局を通じて、金融サービスを提供しています。
信託銀行
お金の預金業務だけでなく、不動産や有価証券などといった財産も預かり、それらを管理・運用するという「信託業務」を行なっている銀行のことです。三菱UFJ信託、みずほ信託、三井住友信託が「大手信託三行」と呼ばれています。
ネット銀行
対面の店舗を持たず、インターネット上での取引を中心に営業している銀行のこと。パソコンやスマートフォンを経由し、振込や残高照会、取引明細照会、定期預金取引などが行なえるサービスを提供しています。「楽天銀行」や「ジャパンネット銀行」、「ソニー銀行」などが人気です。
銀行業界の歴史と世相の動向
銀行の起源は、江戸時代にまでさかのぼります。江戸時代には金・銀・銭という3つの貨幣が使用されており、いつしかその交換を行なう「両替商」という商売が誕生しました。そして、商人や大名などを相手に預金の受入や手形の発行、決済、貸付など様々な業務を行なうようになります。
日本で初めて作られた本格的な銀行は、明治維新後に設立された「第一国立銀行」。明治政府はアメリカのナショナルバンク制度を見習って「発券制度」を導入することを決め、銀行券(いわゆる紙幣)の発行が開始されました。
最初に誕生した私立銀行は、1876年(明治9年)に設立された「三井銀行」です。それによって国立銀行と私立銀行の役割が分担されるようになり、日清戦争前後には多くの普通銀行が設立されていきました。その後、銀行業界初の大きな転換期を迎えます。
まずは、第二次世界大戦後の高度成長期。政府は日本経済を復興させるために「護送船団方式」という策を講じ、弱小金融機関が破綻しないように官庁が金融機関を管理・指導して収益を確保していく体制を取りました。それにより「銀行業界は潰れない」イメージが定着し、人々は安心して銀行にお金を預け、銀行はそのお金をもとに大企業に貸し出すという運用サイクルができあがっていきます。
この「護送船団方式」が銀行の基盤を作り上げ、高度経済成長期を推進しました。しかしそれからまもなくバブルが崩壊し、その打撃を大きく受けた銀行が次々と破綻。「護送船団方式」は崩壊してしまいます。
次の転換期となるのが、1996年(平成8年)に実施された金融ビッグバンです。当時の橋本内閣は、欧米に後れを取っていた金融自由化を目指し「フリー(市場原理が働く自由な市場)」・「フェア(透明で信頼のできる市場)」・「グローバル(国際的で時代を先取りする市場)」という3つの改革を掲げて規制を緩和しました。
銀行が提供できる商品やサービスを拡大したり、外国為替取引を完全自由化にしたりなど、金融業界における法整備が進められていきます。およそ1,200兆円にものぼる個人貯蓄の運営計画も掲げられ、その結果貯蓄メインだった銀行が「投資」という規模の大きな役割を担うようになったのです。
そして3つ目の転換期が2009年(平成21年)の「リーマンショック」。アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズが経営破綻したことを受け、リーマンショックと呼ばれる世界恐慌に襲われました。日本の銀行も打撃を受けたものの、それがきっかけとなって銀行はますます体制を強化させ、国際競争にも打ち勝つことができる大きな基盤を形成。それが現在のメガバンク体制や、グローバル化に繋がっていると言われています。
銀行業界の市場規模と年収
2015~2016年(平成27~28年)における銀行業界全体の市場規模は、約25兆円。ここ数年堅調な業績で推移してきました。しかし2015年(平成27年)に入り、収益性の低下が見られるようになります。具体的には、3大メガバンクの利益が2014年(平成26年)に比べて5.5%減少、銀行業界全体でも3.6%減少しました。
この主な原因と言われているのが、日銀が打ち出した「マイナス金利政策」です。これは日銀が銀行から預かるお金の一部に-0.1%の金利を付けるというもの。
つまり、銀行が日銀にお金を預けるとその金利分のお金を取られて、損をしてしまいます。この政策によって銀行が日銀にお金を預けっぱなしにせず、預けたお金を個人や企業に貸し出すなど積極的に運用することで、お金の流れを良くしたいという狙いがありました。
また、マイナス金利政策によって低い水準の金利が銀行同士でお金をやり取りする際の目安となり、商品やサービスの金利も下がって企業や個人がお金を借りやすくなり、景気が良くなることが見込まれていたのです。しかし実際には、この政策を打ち出したあともなかなか思惑通りに政策の効果が出ていないため、数字的に見ると収益力低下、業績悪化が顕著に表れてしまっていると言えます。
銀行業界の初任給は20万円程度が相場です。30代の平均年収はおよそ600万円、40代は750万円で、所属する銀行の種類や職種によって違いがあります。例えば、都市銀行と地方銀行の年収の差は、100万円以上。また、銀行の職種は「総合職」と「事務職」に分けられますが、総合職の方が年収は高く、その中から管理職に抜擢された場合はエリート行員として出世の道を歩み、かなりの高給が期待できます。
ちなみに、東京商工リサーチの実施する「2016年(平成28年)決算「上場3,079社の平均年間給与」調査」の銀行業界における平均年収ランキングは、1位が三井住友フィナンシャルグループの、1,272万円<です。以下、三井住友トラストホールディングスの1,235万円、三菱UFJフィナンシャルグループの1,132万円。大手都市銀行が高待遇であることは一目瞭然で、年収の高さと業界内でのシェアの大きさはほぼ比例しています。
銀行業界のシェアNo.1「三菱UFJフィナンシャルグループ」
三菱UFJフィナンシャルグループは、「三菱UFJ銀行」を中核に形成された総合金融グループです。三菱UFJ銀行は、2006年(平成18年)に東京三菱銀行とUFJ銀行の合併によって誕生したメガバンクのひとつで、首都圏、京阪神圏、名古屋圏の3大都市圏を営業地盤に持っています。銀行、証券、信託、カード、リースなど幅広い分野における業務を展開。三菱UFJ銀行だけでも700以上の国内拠点、70以上の海外店舗を所有し、従業員数は35,000人以上と業界では最大規模です。
また、アメリカの地銀「ユニオン・バンク」を子会社とし、海外への貸付や外貨の受入など、国際業務に力を入れているのも強み。
業界内トップであるというプライドを持ち、日本最大規模の銀行であることからネームバリューや信頼度は群を抜いています。そのため親密な関係にある企業や地方銀行が多く、商品やサービスの種類が多いのも特徴です。
売上動向
2017年(平成29年)3月期における三菱UFJフィナンシャルグループの売上高は、5兆9,795億円で、業界内堂々の第1位。2位の三井住友フィナンシャルグループに差を付けました。売上高の営業利益率も高い水準を保っており、収益性も業界内トップです。
近年売上は順調に推移しています。銀行業界内の収益性低下が問題視されていますが、三菱UFJフィナンシャルグループは海外事業に尽力していることが功を奏し、今のところ不安要素はありません。特に海外の銀行を続々と買収してグループの規模を成長させており、そういった海外事業における収益アップが今後の利益に大きく影響してくると考えられます。
また、三菱UFJ銀行における国内の口座保有数はおよそ4,000万口座で、日本国民の3人に1人は口座を保有しているというかなりのシェア率です。このように国内外におけるシェアが高いことが、三菱UFJフィナンシャルグループを不動の首位に君臨させています。
今後のビジョン
三菱UFJフィナンシャルグループは、顧客基盤と財務基盤の両方を併せ持ち、他行にはできないような積極的な事業展開ができることが最大の特徴。その強みを活かし、今後も積極的な戦略投資や海外拠点でのさらなる開拓が期待されます。特に東南アジアマーケットを確実に取っていくことが、収益性を高めるために重要なビジョンです。
メガバンクの中では最も海外に強いグループと言われていますが、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーのような「グローバル・インベストメント・バンク」と比較すると、海外事業における収益の高さはまだまだ及びません。今後どのような戦略でどのくらい成長できるか注目です。
投資銀行業務とリテール業務が強み「三井住友フィナンシャルグループ」
三井住友フィナンシャルグループは、「三井住友銀行」を中核として形成された金融グループ。三井住友銀行は、2001年(平成13年)に三井グループの「さくら銀行」と住友グループの「住友銀行」が合併して設立された、3大メガバンクのひとつです。三井財閥と住友財閥という財閥の枠を超えて合併したことが当時大きな話題となりました。本店は東京にあるものの、住友グループの拠点である大阪にも強い営業基盤を持っており、主に東と西の大都市圏を中心に事業を展開しています。
三井住友フィナンシャルグループの強みは2つ。まずひとつ目が、投資銀行業務です。金融工学や行動ファイナンス理論といった金融理論を独自の方法で活用し、資産管理を高度化。それによって、顧客のニーズに合った満足度の高い商品やサービスの提供を実現させています。
そしてもうひとつの強みは、リテール業務。社風のひとつに「多様な人材を受入れる」ことを掲げている通り、文系・理系・国籍問わず様々な個性を持つ人材を積極的に採用しているのが三井住友銀行の特徴です。そういった人材活用がうまく機能し、個人を主体とした銀行業務、すなわちリテール業務に強みを発揮しています。
海外事業にも積極的で、2015年(平成27年)にはヤンゴン支店(ミャンマー)、マニラ支店(フィリピン)を開設しました。また、カンボジアのアクレダ銀行に出資するなど、東南アジア圏を中心に着々と事業を展開させています。
売上動向
2017年(平成29年)3月期における三井住友フィナンシャルグループの売上高は、5兆1,332億円で業界内では第2位。前年度より7.6%増です。
三井住友フィナンシャルグループ中核にある三井住友銀行は、近年顕著に収益性を高めてきましたが、2015年(平成27年)から1年間は中国の株価急落やマイナス金利政策の影響を受け、経常収益、経常利益、当期純利益のいずれにおいても減少しました。しかし2016年度(平成28年度)決算においては横ばいの純利益を確保し、厳しい状況下の中でしっかりと結果を出しています。
今後のビジョン
三井住友フィナンシャルグループが1番の課題として掲げているのが「アジア・セントリック」。日本におけるメガバンクのひとつとして大きな基盤を持っているものの、国内でさらに成長できる可能性はそう高くはありません。そこで、日本のみならずアジア全体をマザーマーケットとし、「グローバルバンク」として成長していくことを目標として掲示しました。具体的には、情報通信技術を活用した新しい個人向け金融サービスを提供するなど、独自の施策でアジア圏におけるシェア拡大を目指します。
また、国内業務においては、様々な業界におけるリーディングカンパニーと提携することで新ビジネスを続々と展開させる予定。具体的には、大和証券グループ、プロミス、NTTドコモなどといった企業と業務提携し、新たな市場確保に向けて計画を練っています。
国内外のビジネス展開がどのように進められていくのか、そしてそれが収益性アップに繋がるかどうかが今後のカギです。
自治体業務が特徴「みずほフィナンシャルグループ」
みずほフィナンシャルグループは、「第一勧業銀行」「富士銀行」「日本興業銀行」が統合して設立された金融グループです。
グループ内では「みずほ銀行」が中核となって業務展開し、三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループと並んで3大メガバンクのひとつとなっています。
前身となる銀行すべてが関東地方を基盤に持つため、関西地方における営業基盤は、他メガバンクに比べると弱め。しかし、メガバンクで唯一47都道府県の県庁所在地及び政令指定都市に必ずひとつ以上の店舗を持っている点が特徴です。これは、みずほ銀行の前身である第一勧業銀行が、全都道府県に支店を持っていたことが大きく関係しており、地域密着型の銀行として活躍しています。
国内に多くの支店数を持っているため中小企業とのかかわりや個人取引が多く、特に自治体業務が強み。唯一宝くじを取り扱っている特殊な銀行です。
売上動向
2017年(平成29年)3月期におけるみずほフィナンシャルグループの売上高は、3兆2,929億円で業界内では第3位。売上高の営業利益率が高く、売上高第2位の三井住友フィナンシャルグループよりも高い利益率を出すこともあります。
他メガバンクと同様に2015~2016年(平成27~28年)においてはマイナス金利政策の影響を受け、厳しい事業環境が続きました。しかしその後は、上場企業のおよそ7割との取引実績があること、銀行・証券・信託・アセットマネジメントなどといったフルラインサービスをワンストップで提供できるといった強みでしっかりと踏ん張り、2016年(平成28年)はみずほ銀行の純利益予想である6,000億円を達成。こうした「お得意様との絆の強さ」で、今後も着実に業績を伸ばしていくことが予想されます。
今後のビジョン
まず、みずほフィナンシャルグループの自己資本率は他メガバンクと比べるとやや低いため、自己資本率を安定させて信頼性を高めることがひとつの目標です。また、これまでは国内市場を基盤としたビジネスが主軸でしたが、ライバルグループへの対策や国内市場における伸び悩みを視野に入れ、海外事業に尽力することも求められます。
実際にみずほフィナンシャルグループは世界の大企業のおよそ8割と取引を行なっており、そういったネットワークを最大限に活用した新たなビジネス展開を期待することが可能です。
銀行業界の課題と将来性
近年の不景気による影響から、銀行は「貸渋り」、つまり民間の借手に対する審査や融資条件を厳しくし、融資に対して消極的になってしまいがちです。リスクを軽減して安定した経営を心掛けたいという姿勢は自然とも言えますが、そもそも銀行業界は貸付による利息で利益を得ています。貸渋りをすることで業界全体の業績が落ち込むことに繋がってしまうため、決して得策とは言えません。貸渋りという手段ではなく安定した経営を行なえるよう、経営体制を進化させる必要があります。
また、もうひとつの課題が「収益性の低さ」。この大きな要因となっているのが、銀行を利用する利点の低下です。バブル崩壊前までは、銀行に預金するとしっかりと利息が付き、銀行にお金を預ける確実な利点がありました。
しかしバブル崩壊後に金利が低くなり、現在では大金を預けてもほとんど利息が付かない状態になっています。しかも手数料が引かれて結局損をしてしまう場合もあり、利用者にとって銀行を利用する利点が少なくなっているのです。この状況を改善するためには、バブル崩壊前と同じくらいの利息を付け、銀行離れしている利用者を再取り込みすることが大切と言えます。
特に近年は規制緩和の影響もあり、インターネット銀行などの新しい形の銀行や、金融商品が増加。銀行窓口のように受付時間を選ばず、いつでも気軽に利用できるインターネット銀行は、かなりの人が利用する口座となっています。他にも規制緩和で生み出された多くの資産運用法があり、将来への不安から個人での資産運用を行なう人も増加。こうした個人サービスをいかに充実させて顧客を取り込むかも、銀行業界の重要な課題のひとつです。
さらに銀行がひとつの産業として発展していくためには、他の業界と同じようにグローバル化の波に乗ることが必要。すでにメガバンクは海外企業との取引や買収を進めていますが、まだまだ開拓の余地はたくさん残されています。
メガバンク以外の都市銀行も、海外進出を視野に入れて収益力を高めていかなければ、銀行業界で生き残っていくことは困難です。海外事業をどの程度成功させられるかによって、銀行業界の今後が決まると言っても過言ではありません。グローバル化を成功させるためには、マーケティング力を強化することはもちろん、海外現地従業員を積極的に採用し、教育に尽力することも大きな要素です。
※この記事は、2018年6月時点の情報に基づいて作成されています。
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